前置胎盤や低置胎盤と診断されたら?妊娠中の注意点や出産準備・出産方法について解説!

前置胎盤とは?

前置胎盤とは、正常にある位置より低い位置に胎盤が付着してしまったため、胎盤が子宮の入り口の一部又は全部を覆ってしまっている状態をいいます。

全ての分娩の約1%の割合で生じます。

経腟分娩(下からの出産)の場合は、赤ちゃんが生まれ、胎盤が出てくる過程をたどります。

しかし、前置胎盤の場合は胎盤が子宮の入り口を覆ってしまっているため、赤ちゃんが出てこれず、さらに胎盤が赤ちゃんが生まれる前に剥がれて出血してしまった場合、赤ちゃんに栄養や酸素が届かなくなることや、お母さんも出血が多くなり大変危険な状態になります。

そのため、前置胎盤の場合は、全例が帝王切開での出産となります。

また前置胎盤は胎盤が付着している位置により、4つに分類されています。

前置胎盤の診断と分類

初めは経膣超音波検査で診断します。

妊娠の早い時期に前置胎盤や胎盤が低めと診断されても、妊娠が進むにつれて子宮が大きくなると徐々に胎盤が上にあがり子宮口から離れていくことがあります。そのため、最終的には前置胎盤が否定的となるケースが多くあります。

しかし、妊娠30週を過ぎても前置胎盤の場合は、その時点から胎盤が上がっていく(前置胎盤が否定的となる)確率はほとんど低くなります。妊娠32週で前置胎盤と診断された場合には、前置胎盤であると考えます。

前置胎盤の診断が確定すると、胎盤と子宮の入り口の位置関係によって4つに分類されます。

全前置胎盤:胎盤が子宮の入り口(子宮口)を全部覆っている

部分前置胎盤
胎盤のふちから内子宮口までが2cm未満で、内子宮口の一部を覆っている

辺縁前置胎盤:胎盤の端だけが子宮口を覆っている

低置胎盤:子宮口から2cm以内の低い位置に胎盤がある

上記の場合は全例が帝王切開での出産となります。

全前置胎盤と診断された場合、胎盤の状況を確認するためMRI検査を実施することがあります。

MRI検査は磁気を使用した画像検査なので妊婦さんが受けても大丈夫な検査です。

MRI検査では、胎盤が癒着しているかどうかを確認します。胎盤が癒着している場合は大出血になるため帝王切開に備えて準備が必要となります。

前置胎盤での出産

全前置胎盤、辺縁前置胎盤、低置胎盤では、前の項目でもお話した通り全例が帝王切開になります。

前置胎盤は、出産の際に出血が多量となる危険性があるため、輸血ができる総合病院や大学病院での出産となります。

他人の輸血を受けるのを最小限にするため、妊娠中に自分の血液を採取して貯めておく”自己血輸血”を準備する施設が多くあります。

また、手術の際は太ももの付け根の大きな動脈からカテーテルを入れてバルーンを膨らませ、子宮を栄養する動脈を一時的に遮断し出血を予防する”大動脈バルーン”を使用して手術をすることがあります。この方法を実施することで、帝王切開中に胎盤がスムーズに剥がれなかったり、子宮の戻りが悪い場合に多量に出血するのを予防します。

この方法を使用するのは放射線科の医師が産婦人科医師と連携して行います。

自己血輸血の準備や大動脈バルーンの使用で、安全な出産ができるよう準備していきます。

また、自己血輸血では足りない場合があるため、輸血の準備をすることがあります。

出産の時期は妊娠37週台に予定を組んで帝王切開することが多いです(予定帝王切開)。

妊娠37週未満で帝王切開をすると、赤ちゃんが未熟のことがあり、あまり遅くまで待っていると、陣痛や破水により、出血が出てしまうことがあり危険があります。そのため、その方の状況により時期をうまく見極めて出産時期を決めます。

帝王切開の予定日までに警告出血をしてしまった場合には、大出血を防ぐために、時期は関係なく緊急帝王切開を行う場合もあります。その場合、早産の週数でも赤ちゃんを見られるようNICU(新生児集中治療室)のある施設での出産となります。NICUがない出産施設の場合、NICUのある出産施設に搬送されることもあります。

前置胎盤の帝王切開では、どうしても出血が止まらない場合があり、この場合、赤ちゃんだけでなくお母さんの生命に危険が及ぶこともあります。その場合、お母さんの命を守るために子宮を摘出することがあります。

前置胎盤と癒着胎盤

前置胎盤の大きな問題点は胎盤が癒着しているかどうかです。通常は、赤ちゃんが出た後に胎盤は自然に子宮から剥がれて排出されますが、癒着胎盤とは、胎盤が子宮に根を生やしがっちりくっついてなかなか剥がれないことを言います。

前置胎盤のうちの約5~10%が癒着胎盤になってしまいます。

癒着胎盤は前置胎盤でない場合(経膣分娩の場合)にも起こることがありますが、多くは前置胎盤に生じます。この場合、前置癒着胎盤と名付けられています。前置癒着胎盤では、子宮全摘出(子宮を全部取ってしまう)ことが必要です。赤ちゃんを帝王切開で出してから、そのまま子宮を取ることが多くあります。子宮を取らずに残しておいて、胎盤が自然に吸収されるのを待つ方法もありますが、待っている最中に大出血してしまうことがあります。どの方法が一番いいかは、未だに世界的にも決まりがありません。

手術中に胎盤がスムーズに剥がれれば子宮を残すことができますが、手術をしてみないとどうなるかはわかりません。

癒着胎盤の場合、胎盤が剥がれないと子宮の戻りが遅れ大量出血してしまうことがあります。

そのため、出血が出てくる場合はなるべく早く胎盤を剥がすことを試みるため、経腟分娩の場合は痛みを伴うことがあります。

出血が出てこず、胎盤が剥がれない場合は、無理に剥がさず、自然に剥がれるのを待つこともあります。

何度も帝王切開をしたことがある人がリスクファクターでもあります。帝王切開の回数が多くなればなるほど、”前置癒着胎盤”が起きやすいです。それは胎盤は前回張り付いていた場所には張り付きにくいからです。そのため、新たな場所張り付こうとします。

様々説明してきましたが、これは妊婦さんの努力では解決はできません。

担当医師から説明をよく聞き、判断を委ねましょう。

前置胎盤の注意点、警告出血、出産時期と病院

前置胎盤では、妊娠経過中に急に出血してくることがあります。前置胎盤で生じた出血を”警告出血といいます。警告出血は少量の出血が数回にわたってあることが多いですが、、1回目の警告出血が多量の出血になることもあります(ナプキンいっぱいの出血や、血の塊がでてくるような出血)。性器出血があった場合には、下腹痛がなくても、すぐにかかりつけの出産施設を受診しましょう。

前置胎盤と診断された際には、警告出血を予防するため、できるだけ安静にして運動や性交渉などは控えた方がいいでしょう。

また、お腹が張る(子宮収縮がある)と出血しやすくなります。お腹の張りが増えてきた場合も早めに受診しましょう。

前置胎盤があり、お腹の張りがある場合は、併せて切迫早産の治療をすることがあります。

前置胎盤では、警告出血により大出血してしまうと、お母さんの血圧が低下することがあるため、お腹の赤ちゃんへの血流も低下してしまい、赤ちゃんも危険な状態になってしまうことがあります。

その時点で妊娠37週未満の場合でも、警告出血が多量に出てしまった場合は早産の時期に帝王切開をしなければなりません。

「自宅での予期せぬ出血」が一番危険なため、産婦人科医師は妊娠30週過ぎたら前置胎盤があるのかを診断します。そして、大きな病院で管理をする場合は、妊娠32週までに紹介状をもらい、受診するように勧められます。

病院の転院は不安があるかと思いますが、お母さんと赤ちゃんが安全に出産できるよう準備していく必要があります。

前置胎盤では、出産時期より早めに入院管理することがあります。いつ頃入院するのかは決まっていませんが、早めに入院し、帝王切開に備える施設が多くありやす。妊娠経過中に警告出血を認めた場合はその時点で入院し、お腹が張らないように切迫早産の治療(子宮収縮抑制剤の投与)をし、帝王切開の時期を検討します。また、32~34週頃から自分の血液をストックしておく「自己血貯血」を2~3回に分けて行い、帝王切開の準備をしておきます。

自己血貯血は入院していない場合、外来で行うこともあります。

前置胎盤は治る?

前置胎盤は「治す」方法はありません。

妊娠初期に診断された場合は、子宮の増大とともに胎盤位置が子宮口から離れていくことがあります。

妊娠30週を過ぎて、前置胎盤や低置胎盤と言われている場合は治らないと考えた方がいいでしょう。

前置胎盤のリスクファクター

前置胎盤がおこる理由はよくわかっていませんが、リスクファクターはあります。

高齢妊娠、 喫煙者、多産婦、双胎、以前に子宮の手術を受けた(帝王切開、流産・妊娠中絶手術、筋腫核出)などが前置胎盤のリスクです。

もしも前置胎盤と言われたら、かかりつけの医師からよくお話を聞き、お腹の張りや警告出血に注意しながら生活しましょう。

また、お腹の張りが増えたり警告出血がある場合は必ずすぐに出産施設を受診しましょう。

入院の時期や出産方法、出産準備は出産施設により多少異なります。

心配な場合は放射線科や輸血の備蓄、NICUのある施設を出産施設(総合・地域周産期母子医療センターや大学病院)に選ぶと安心でしょう。

様々説明してきましたが、皆様が安全に安心して妊娠管理、出産ができますことを願っております。

MW Yama

MW Yama

現在助産師経験12年目。 BlogやInstagramを中心に妊娠・出産・子育てについての情報をお届けしたり、 ご希望の方に向けてオンラインにて個別にサポートをしております。 安心・穏やかで幸せな妊娠・出産・子育てとなりますよう みなさまのお気持ちを尊重し、愛と優しさを持ってサポートしております。

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