妊娠中から知っておきたい産後のメンタル‼︎マタニティブルーや産後うつとは?症状・原因・治療・予防について詳しくご紹介します。

皆様は、“産後のメンタル”についてどんなイメージがありますか?

世間的に知られているマタニティブルーや産後うつがありますが、意外と”自分には関係ない”と思っている方が多く、メンタルが落ちてから様々な症状や対応について知ることが多くあります。

メンタルが崩れてからでは、治るのに時間を要したり、家族関係をも壊してしまうことになりかねません。

そのため、妊娠中やその前から産後のメンタルについて正しく理解し、どんな予防ができるか?どんな対応をしたらいいか?など、ご本人やそのご家族が事前に知っておくことで、メンタルの崩れを早期に発見し、症状の悪化を防いだり、家族関係を守ることができます。

様々ある産後のメンタルについて1つ1つ詳しく解説していきますので、「こんなこともあるんだなぁ」という気持ちで、理解していきましょう。

また、今苦しんでいる方がいらっしゃいましたら少しでも参考になると幸いです。

マタニティブルーとは

日本産婦人科学会によるとマタニティブルーは産後の女性の30〜50%が経験すると言われています。

マタニティブルーズと呼ばれることもあります。

出産直後は「待望の我が子に会えた」嬉さ・喜び・達成感などに満ちるため、気持ちは高ぶっていますが、産後数日後〜2週間程度のうちにちょっとした精神症状が出現することがあります。

多くは産後3〜5日後にピークがあり、1週間程度で自然に症状がなくなっていくため、特に治療が必要ありません。

マタニティブルーの症状

マタニティブルーの主な症状

・涙が止まらない

・悲しい

・辛い

・イライラする

・気分が落ち込む(抑うつ気分)

・不安に襲われる

・緊張

・集中力の低下

・焦燥感(焦るような気分、どうしていいのかわからない)

・頭痛

・疲労感

・食欲の低下

・眠れない

・物忘れしやすい

・リラックスできない

など

多くの症状が一過性に生じます。

マタニティブルーの原因

妊娠を維持するために分泌していた卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)が、出産で胎盤が娩出されることで急激に減少します。

このホルモンの変化がメンタルに大きく影響を与え、更に慣れない育児や産後の疲労が加わることで精神面が崩れやすくなります。

月経の際のメンタルの酷いバージョンとも言われています。

それくらい産後のホルモンはジェットコースターのようにガラリと変わり気分や体調を崩しやすい状態なのです。

マタニティブルーの改善方法

数日〜1週間程度、家族や周囲の協力を得ながら、育児をしつつも休息をとる、好きなことをする、誰かに話すなど発散することが出来れば自然に回復していきます。

また、ご家族や周囲に頼ること、任せることを心がけましょう

全部自分で抱え込んでしまったり、100%の育児や家事を目指してしまうとマタニティブルーになる傾向にあります。

少しぐらいできなくても「まあいいか。」や少し手抜きをしようという気持ちで子育てを楽しみましょう。

辛くなったら深呼吸、一度立ち止まって、穏やかな気持ちで過ごしましょう。

マタニティブルーは長引く場合、産後うつ病に移行することがあります。

症状が強い場合、産後1ヶ月経っても気分や体調が戻らない場合は注意しましょう。

また、元々精神科や心療内科に通院している方も注意が必要です。

「私は大丈夫、時間が経てば治る」と一人で抱え込まずに、出産した施設や保健師さんなどに相談してみましょう。

産後うつ病

産後数週間、数ヶ月まで続く極度の悲しみ、気持ちの落ち込みなど心理的な障害が起きている状態のことを言います。

日本産婦人科学会によると産後の方のおよそ10〜15%に発症すると言われています。

うつ病になったことがある場合、産後うつ病を発症しやすくなります、

産後うつ病になると極端に悲しくなったり、イライラしたり、自責感・自己評価の低下などがあり、産後3ヶ月以内に発症することが多いです。

マタニティブルーは通常1〜2週間で治るのに対し、産後うつは2週間以上の精神的な症状が持続するとリスクが高まります。

産後うつの主な症状

産後うつ病の主な症状

・抑うつ気分

・泣き叫ぶ

・極度の悲しみ・落ち込み

・他人や物事への興味や喜び・嬉しいなどの感情の減退

・食欲不振・増加、それに伴う体重の変化

・不眠(寝たくても眠れない)

・睡眠過多(起きられない)

・極度の疲労感

・イライラして動き回る、または動作が緩慢になる

・家事・育児の気力減退

・何ごとに対しても価値を見出せない

・過剰な罪悪感、マイナス思考

・思考力、集中力、決断力の減退 

・赤ちゃんが可愛いと思えない

・赤ちゃんの世話が面倒に感じる

・自分は母親失格だと責める

・自殺念慮   など

上記のような症状により、動悸・息苦しさ・発汗・めまいなどの身体症状(不安発作、パニック発作、過呼吸発作など)起きることがあります。

また、他人を避け友人や家族と会いたくなくなったり、産後のサポートやママ友などのグループ・コミュニティに参加する気持ちになれなくなります。

物事がうまくいかないと感じやすくなり、「生きている意味がない」「自分がいないほうが家族が幸せになるのでは」などを考えるようになります。

その結果、自分を傷つけるなどの自傷行為や自殺などを実行してしまうこともあります。

産後うつの原因

・うつ病の既往

・産後うつ病の既往

・うつ病の家族歴

・パートナー・夫・家族からのサポート不足

・夫婦関係がうまく行っていない、経済的問題を抱えている、パートナー不在による孤独

・妊娠(早産や子どもの異常)、出産(思い描いた出産ではなかったなど)・産後(育児や授乳がうまくいかないなど)の経過に異常があった場合

・家庭内暴力

・望まない妊娠

産後うつを早期発見するには?

産後うつの早期発見のため、多くに施設では産後健診でEPDS(エジンバラ産後うつ病問診票)を用いたスクリーニングを実施しています。

EPDSでは診断することが出来ないため、うつ病の診断には精神科の診断が必要となります。

そして治療には薬物療法だけでなく、パートナーをはじめとした家族・医療スタッフ・地域保健師などの連携が必要となります。

産後うつになると、子供の情緒や発達への影響、父親のメンタルヘルスへの影響もあります。

また母子関係の影響もあり、ご本人の精神状態が異常なまま育児が継続されると、子供への虐待のリスクも出てきます。

また最終的に「自分なんかいないほうがいいのではないか」「死にたい」などの自殺念慮が出てくることもあります。

産後うつ病のスクリーニングのための3種類の質問票

産後の母親を対象に3種類の質問票を活用して実施します。(外国の方の場合は日本人との感情表出の程度が違うため対象外です)

質問票だけでなく問診を行い育児の状況、お母さんの精神状態など確認してきます。

この質問の内容や点数、評価は医療従事者が理解していればいいと思われがちですが、お母さんやご家族も理解する必要があると私は感じます。

これらを理解することで、ご自身の精神状態がわかるとともに家族や周囲のサポートがさらに必要かどうかもわかります。

産後うつは症状が酷くになる前に気がつくことで最悪な事態を免れますし、軌道修正ができます。

自分は大丈夫と思いがちな方が多いですが、どうか恥ずかしがらず、目をそらさず、正直な気持ちで回答して見てください。

意外と点数が高く出る方が多くいらっしゃいます。

点数が高く出てもいいんです。これから気持ちが少しでも改善できるよう、ご家族や出産した施設、地域の保健師さんと一緒に改善していきましょう。

大切なのは1人で抱え込まずにSOSを出せるかどうかで今後の生活や人生が変わってきます。

◎産後うつ病を疑う基準

①EPDS(エジンバラ産後うつ病問診票)で合計得点が9点以上

②EPDS(エジンバラ産後うつ病問診票)の質問10「自分の体を傷つけるという考えが浮かんできた」の点数が1点以上

③産後の気分の変化が続いている

④赤ちゃんへの気持ち質問票(ボンディング)が高得点

とあります。

育児支援チェックリスト

あなたへ適切な援助を行うために、あなたのお気持ちや育児状況について以下の質問にお答えください。

あてはまるお答えの方に⚪︎をしてください。

1.今回の妊娠中にお腹の赤ちゃんやあなたの体について、またはお産の時に医師から何か問題があると言われていますか?

  はい  ・  いいえ

2.これまでに流産や死産、出産後1年間にお子さんを亡くされたことはありますか?

  はい  ・  いいえ

3.今までに心理的なあるいは精神的な問題でカウンセラーや精神科医師、または心療内科医師などに相談したことはありますか?

  はい  ・  いいえ

4.困った時に相談する人についてお尋ねします。

  ①夫には何でも打ち明けることができますか? 

   はい  ・  いいえ  ・  夫がいない

  ②お母さんには何でも打ち明けることができますか?

   はい  ・  いいえ  ・実母がいない

  ③夫やお母さんの他にも相談できる人がいますか?

   はい  ・  いいえ

5.生活が苦しかったり、経済的な不安がありますか?

  はい  ・  いいえ

6.子育てをしていく上で、今のお住まいや環境に満足していますか?

  はい  ・  いいえ

7.今回の妊娠中に、家族や親しい方が亡くなったり、あなたや家族や親しい方が重い病気になったり事故にあったことがありましたか?

  はい  ・  いいえ

8.赤ちゃんが、なぜむずかったり、泣いたりしているのかがわからないことがありますか?

  はい  ・  いいえ

9.赤ちゃんを叩きたくなることはありますか?

  はい  ・  いいえ

この質問票では、ご自身の精神面が崩れやすいリスクや家族や周囲のサポート状況、母子関係についてがわかります。

EPDS(エジンバラ産後うつ病問診票)

産後の気分についてお尋ねします。あなたも赤ちゃんもお元気ですか?

最近(過去7日間)のあなたの気分をチェックした見ましょう。

過去7日間にあなたが感じたことに最も近い答えに⚪︎をつけてください。必ず10項目全部に答えてください。

1.笑うことができたし、物事のおもしろい面もわかった。

 (0)いつもと同様にできた

 (1)あまりできなかった

 (2)明らかにできなかった

 (3)全くできなかった

2.物事を楽しみにして待った

 (0)いつもと同様にできた

 (1)あまりできなかった

 (2)明らかにできなかった

 (3)ほとんどできなかった

3.物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた

 (3)はい、たいていそうだった

 (2)はい、時々そうだった

 (1)いいえ、あまり度々ではなかった

 (0)いいえ、全くなかった

4.はっきりした理由もないのに不安になったり、心配したりした

 (0)いいえ、そうではなかった

 (1)ほとんどそうではなかった

 (2)はい、時々あった

 (3)はい、しょっちゅうあった

5.はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた

 (3)はい、しょっちゅうあった

 (2)はい、時々あった

 (1)いいえ、めったになかった

 (0)いいえ、全くなかった

6.することがたくさんあって大変だった

 (3)はい、たいてい対処できなかった

 (2)はい、いつものようにはうまく対処できなかった

 (1)いいえ、たいていうまく対処した

 (0)いいえ、普段通りに対処した

7.不幸せな気分なので、眠りにくかった

 (3)はい、ほとんどいつもそうだった

 (2)はい、時々そうだった

 (1)いいえ、あまり度々ではなかった

 (0)いいえ、全くなかった

8.悲しくなったり、惨めになったりした

 (3)はい、たいていそうだった

 (2)はい、かなりしばしばそうだった

 (1)いいえ、あまり度々ではなかった

 (0)いいえ、全くそうではなかった

9.不幸せだったので、泣いていた

 (3)はい、たいていそうだった

 (2)はい、かなりしばしばそうだった

 (1)本の時々あった

 (0)いいえ、全くそうではなかった

10.自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた

 (3)はい、かなりしばしばそうだった

 (2)時々そうだった

 (1)めったになかった

 (0)全くなかった

全10問、30点満点です。

この質問票では母親が抱える心の問題がわかります。

うつや不安の状況について知ることができます。

我が国では合計得点9点以上を高得点とし、産後うつの可能性があり、必要時精神科や心療内科への受診を進める場合があります。

赤ちゃんへの気持ち質問票(ボンディング)

育児の負担や赤ちゃんへの気持ちを評価するものであり、否定的な気持ちや虐待の危険性の有無をチェックします。

あなたの赤ちゃんについてどのように感じていますか?

下にあげているそれぞれについて、今のあなたの気持ちに一番近いと感じられる表現に⚪︎をつけてください。

1.赤ちゃんを愛おしいと感じる

 (0)ほとんどいつも強くそう感じる

 (1)たまに強くそう感じる

 (2)たまに少しそう感じる

 (3)全然そう感じない

2.赤ちゃんのためにしないといけないことがあるのに、おろおろしてどうしていいかわからない時がある。

 (3)ほとんどいつも強くそう感じる

 (2)たまに強くそう感じる

 (1)たまに少しそう感じる

 (0)全然そう感じない

3.赤ちゃんのことが腹立たしくいやになる

 (3)ほとんどいつも強くそう感じる

 (2)たまに強くそう感じる

 (1)たまに少しそう感じる

 (0)全然そう感じない

4.赤ちゃんに対して何も特別な気持ちがわかない

 (3)ほとんどいつも強くそう感じる

 (2)たまに強くそう感じる

 (1)たまに少しそう感じる

 (0)全然そう感じない

5.赤ちゃんに対して怒りがこみ上げる

 (3)ほとんどいつも強くそう感じる

 (2)たまに強くそう感じる

 (1)たまに少しそう感じる

 (0)全然そう感じない

6.赤ちゃんの世話を楽しみながらしている  

 (0)ほとんどいつも強くそう感じる

 (1)たまに強くそう感じる

 (2)たまに少しそう感じる

 (3)全然そう感じない

7.こんな子でなかったらなあと思う

 (3)ほとんどいつも強くそう感じる

 (2)たまに強くそう感じる

 (1)たまに少しそう感じる

 (0)全然そう感じない

8.赤ちゃんを守ってあげたいと感じる

 (0)ほとんどいつも強くそう感じる

 (1)たまに強くそう感じる

 (2)たまに少しそう感じる

 (3)全然そう感じない

9.この子がいなかったらなあと思う

 (3)ほとんどいつも強くそう感じる

 (2)たまに強くそう感じる

 (1)たまに少しそう感じる

 (0)全然そう感じない

10.赤ちゃんをとても身近に感じる

 (0)ほとんどいつも強くそう感じる

 (1)たまに強くそう感じる

 (2)たまに少しそう感じる

 (3)全然そう感じない

産後うつ病の予防法

 産後の感情は結局のところ、発散させることが一番の改善方法です。

 産後の感情の変化を対処するための例を紹介します。

・赤ちゃんが寝ているときは自分も休息を取るようにしましょう

 夜中に赤ちゃんが起きていることが多い場合はお昼寝をしないと体力が持たなくなります。

 30分でも1〜2時間でもこまめに休息を取ることで体力を温存することや気持ちのコントロールにも繋がります。

・全てを自分1人で完璧にしないようにしましょう

 育児や家事を100%こなすことは無理です。赤ちゃんは1日約8回の授乳の他に、お風呂に入る、泣き止まなくで抱っこする、寝かしつけるなどの時間があり、その間にご自身の休息や家事を行います。

 1日は24時間しかありません。全てを完璧に行うのは魔法使いでもいない限りできません。ご自身のペースでこなす、掃除は余力があるときに、料理は全て手作りにしないなどの手抜きが必要です。

 頑張りすぎず頑張りましょう。食事は宅配サービスを依頼したり家族に頼ること、ヘルパーさんやシッターさんにきてもらうことを選んでいる人も多くいらっしゃいます。

・自分の気持ちは溜め込まないようにしましょう

 他の人(夫やパートナー、家族、友人)に話すことで、わかってくれなくても気持ちを発散することができます。

 もちろん共感してくれる人が近くにいたら何よりですが・・・。

 気持ちを知っってもらう、理解してもらうだけでも家族のサポートが得られるかも知れませんよ。

・時には赤ちゃんと離れて、ご自身の好きなことをしてみましょう

 24時間365日の育児では気が滅入ってしまうのは当然です。時にはご家族に赤ちゃんを預け、ご自身の好きなことをする時間を作りましょう。

・メリハリのある生活をしましょう

 毎日が部屋着やパジャマのままでは気持ちも切り替えが難しくなります。たまには着替えたり、お化粧をしたり気分を変えて見ましょう。

 朝起きたらカーテン・窓を開ける、夜はお部屋を暗くする。1つ1つが脳のホルモンの分泌にも関わってきます。

 またときには近所でもいいのでお散歩してみるのもいいでしょう。

・サポートや預け先があるのなら夫やパートナーだけと過ごす時間を取りましょう

普段なかなか話せないこと、楽しいことなどがあればまた頑張ろうと思えるかも知れません。また夫婦間の良いコミュニケーションはその後の生活や育児にも良い影響があります。

このように、何か発散させること・楽しみを作ることが気持ちのコントロールにはとても大切です。

またメンタルの崩れが長引いている場合は、精神科や心療内科に受診しましょう。精神科や診療内科の受診は抵抗がある方も多くいらっしゃるかもしれません。ですが、一時的に受診し、早期から相談・治療することで症状の悪化を防ぎ、治るのも早くなる傾向にあります。

また、最初は出産した施設や保健センターの保健師さんに相談してみるのもいいと思います。

産褥期精神病

産後にではありますが深刻なケースである産褥期精神病を発症することがあります。

幻覚や妄想、興奮、まとまりのない言動などの症状(躁になったりうつになったりする)が出現し、非常に混乱した状態になった状態を言います。

錯乱状態に陥って、自殺や他害(赤ちゃんや家族を傷つける)などの恐れがあるため早急な治療が必要となります。

産後の約0.1%(1000人に1人)が発症する病気であり、聞いたことがない人も多くいます。

一般的に症状は2〜12週間に及び、完全に回復するまでには1年程度かかるケースもあるようです。

産褥期精神病ははっきりとしたメカニズムはまだ解明されていない部分も多くあります。

リスクとして双極性障害の既往や家族に精神疾患の方がいる場合に生じる場合があります。

産褥期精神病にかかると、家族や地域の協力や支援を借りて一旦育児を休み、精神科に入院し治療に専念することになります。

治療は薬物療法(向精神薬、気分安定剤など)、電気けいれん療法などが行われます。

経過は治療により多くは回復に至りますが、双極性障害を発症するリスクがあるそうです。

入院中はお母さんの治療だけでなく、退院後の地域での支援体制を整え、家族に病気について理解してもらい、自宅で過ごしやすい環境づくりを行います。

また次の出産の時も発症する場合(約30〜50%の確率)があるため、精神科と産婦人科のある環境の整った場所での妊娠・出産・産後の管理が必要となります。

ガルガル期

ガルガル期とは、動物介でよくみられる、子どもを出産したメスが外敵をガルガルと威嚇し子どもを守ろうとする母性本能から、気性が荒くなる期間を言うネットスラングのことを言います。

産後ガルガル期とも呼ばれ、出産後のホルモンの変化によって精神的なバランスを崩しやすい時期に出やすい症状の一つで、出産後の6週間から8週間の時期に発生しやすいとされています。

産後は、ホルモンの変化が起こるうえ、授乳、赤ちゃん中心の生活に一変するため、これまでの自分の生活スタイルとはかなり異なります。

また、子育てをするプレッシャーにより、心のバランスを保つことが難しくなることもガルガル期の原因とされています。

何ヶ月続くかという定義はとくにありませんが、出産から3ヶ月ほどの間に落ち着くことが多いようです。ママや赤ちゃんの健康状態、パパや周囲のサポートなどによっても期間は違ってくるかもしれません。

マタニティブルーや産後うつとの鑑別はしにくいですが、ガルガル期についても知っておきましょう。

ガルガル期の主な症状

・今まで気にならなかったような些細なことにイライラする

・パートナー(夫)にキツくあたってしまう

・ちょっとした言葉が気になってしまう

・他人に自分の赤ちゃんを触らせたくないと思う

・突然悲しい気持ちになり泣きたくなる

・気持ちが不安定だと感じる

・警戒心が強くなった など

ガルガル期を乗り越えるためには、自分の気持ちをパートナー(夫)や周囲に伝えることが大切です。

大変なことや考えていることを「周りの人に察してほしい。」と思いたいところですが、そもそも他人にはなかなか自分の気持ちは伝わりにくいものです。
さらに性別の違うパートナー(夫)には到底わからないものなのです。

パートナー(夫)も初めての生活環境の変化や妻の変化に戸惑いを感じているはずです。

男性心理としては、わからないことは手を出しにくい・入り込みにくいと感じるものです。

何かをしてほしい場合は、察してもらったりやってもらうのを待つのではなく、しっかり伝えたほうが早い場合もあります。

また、男性からもあらかじめ伝えてもらったほうが動きやすかったり入り込みやすい可能性があります。

まずは自分の気持ちを話してみましょう。「イライラしてしまう」「嫌だと感じる」ことなど、具体的に伝え、「こうしてほしい」まで伝えられるとGOODです。

何かをしてほしいときは具体的にその方法を伝えましょう。伝えるのが面倒なときはその方法がわかるように付箋を貼っておくなどをするとより行動に移しやすいです。

現代社会なので直接伝えることが難しい場合は、メールやLINEなどのツールを使って気持ちを伝えても良いですね。

自分の気持ちが落ち着いているときに書いて気持ちを伝えましょう。ガルガル期であることをわかって欲しいという気持ちも正直に伝えてみましょう。その際、感謝の言葉も忘れずに伝えましょう。

お互いを理解し合えることでガルガル期は乗り越えやすくなります。

そして、ガルガル期を乗り越えるには、パートナー(夫)の理解が特に大切だと言われています。

パートナー(夫)とよく話し合い、お互いの立場に立って考えられるようにしましょう。

パートナー(夫)は、育児や家事が大変なママの状況に寄り添う気持ちや思いやりを持つことが大切です。

家事や育児のに参加することだけでなく、心理的なサポートも心がけましょう。

ガルガル期のママの取り扱い方

・ママの気持ちを先回りした行動を心がける

・感謝の気持ちを伝える

・コミュニケーションを取る

・過度な干渉は控える

・上の子のお世話や家事をする

・ママの不満や不安を受け止める

・パパにストレスを感じているとわかったら距離をおく

・ストレスになりそうなことは避けてあげる

・パパは自分のことは自分でする

ガルガル期、ご夫婦で協力して乗り越えて家族として成長していきましょう。

産後クライシス

産後クライシスとは、子供が産まれてから数年間のうちに夫婦仲が急激に悪化することを言います。

起こりやすい時期は子供が産まれてから、子供が幼稚園や保育園に上がるくらいまでの4〜5年間です。場合によってはもっと長く続くこともあります。

産後クライシスの症状

・ちょっとしたことで夫にイライラする
・感情的になり、夫に対して攻撃的になる
・喧嘩が絶えず、お互いに家にいてもくつろげない
・夫婦間での会話が減る
・配偶者に対して愛情を感じなくなる
・配偶者との触れ合いが苦痛に感じる
・配偶者からの愛情を感じられず冷たくされていると感じる
・夫が外出ばかりで家におらず、家事・育児に非協力的なことに不満を感じる
・妻が子どもにしか目を向けず自分を放置していることに不満を感じる

産後の体調、ご家庭の育児参加状況や環境、夫の妊娠・出産・育児への理解度・協力によって異なりますが、一旦産後クライシスに陥ると、長期戦になることもあります。

産後クライシスは、ただの夫婦喧嘩とは異なり、原因はもっと複雑です。

産後の身体や生活の変化により、子供が産まれて本当は幸せなはずなのに、自分ではコントロールできないほどのイライラやストレスを感じたり、憂鬱感や不安感が募ったりしてしまうのです。

男性はこの女性の産後の身体や生活の変化についていけていないケースがあります女性は自然と妊娠・出産により少しずつ勉強や体験の機会があったりしますが、男性は出産後退院してきた妻と子どもとの生活が急に始まって初めて体験します。

女性はやってほしい、やってもらって当たり前となりがちですが、男性はどうしたらいいかわからない、何をしたらいいかわからないという気持ちになります。

また、このまま男性が育児参加ができないと「子どもばっかりをみて自分を見てくれていない」「無視されている」ような疎外感を感じてしまうことがあります。

このすれ違いにより産後クライシスが起きるとされています。

産後も働く女性が増えている現代では、男性の育児や家事の協力がないとどうしても女性側の負担が大きくなってしまいます。そこで、「夫が協力してくれない」「手伝ってくれない」となると、不満が募り、す産後クライシスに陥りやすくなります。

◎産後クライシスの対処方法◎

 す産後に「パートナー(夫)が手伝ってくれない」「何も協力してくれない」と不満やイライラする女性は多いですが、多くの男性は悪気があって手伝わないわけではありません。

「どうしていいかわからない」ということがほとんどなのです。
妻と子どもが帰ってきてスタートする生活、パートナー(夫)もパパ1年生なのです。

自分がしてほしいことを説明してあげるというイメージを持ってみてください。

産後の大変な最中ですが、まだ“わかっていない”パートナー(夫)に対して具体的に「こういうことをしてくれるとありがたい」「こうしてほしい」と、女性側がリードして教えてあげるようにしてみましょう
ただし、こうするべき、こうじゃないとなど自分の方法を押し付けるのではなく、「こうしてほしい」と、リクエストとして伝えていくと、相手もわかってくれるはずです。

また、夫は妻が休める環境を作れるようにしましょう。

産後は、赤ちゃんの夜泣きがひどかったり、ミルクを数時間おきにあげないといけなかったり、ホルモンバランスの影響で具合が悪くなったりします。

そんな時期だからこそ、女性がゆっくり休める時間を作ることは非常に大事です。

夫側は、奥さんがつらそうなときに、「ベビーシッターさんを頼もうか」「僕が面倒見るから1時間でも寝て」「僕が子供を見ているからランチに行ってきて」などと言ってあげる気遣いが必要です。
ただし、なかには「赤ちゃんを他人には預けたくない」という女性もいます。

そういった場合、「シッターさんを頼もうか」の一言が喧嘩の火種になってしまうことも。こういった状況にならないためにも、互いの価値観を知り、すり合わせておくことは非常に大事なことです。

パートナー(夫)が子供を産んだ後の妻をどれだけねぎらって協力できるかどうか、妻が出産前と同様に夫を愛せるかどうかでも産後クライシスの深刻度は変わってきます。

夫婦だけでは解決が難しい場合は、信頼できる第三者に協力を依頼してみましょう。例えば、夫の家族や友人に入ってもらったほうがスムーズに解決する場合もあります。また、子育てカウンセラリングや夫婦カウンセラリングを専門としている施設に相談するという方法もあります。様々ある方法をTRYしながら解決を図っていきましょう。

産後クライシスの原因となるのは、「女性ホルモンの変化」や「出産や育児・家事への意識や価値観の違い」「夫婦間のコミュニケーション不足」など、いずれも出産前後のタイミングで生じやすい事柄ばかりです。しかし、夫婦それぞれの行動や考え方次第で深刻化を防げると考えられます。また、産後クライシスは解決できれば夫婦の絆・家族の絆を深める可能性も大いにあります。夫婦で協力・産後クライシスについて理解し、時期を超えられれば、幸せな家族生活を送れるかもしれません。

まずは、一人で抱え込まず、周囲に相談や助けを求めましょう。

パートナー(夫)のパタニティブルーや産後うつ

女性にフォーカスを置かれてきたマタニティブルーや産後うつですが、近年男性もパタニティブルーや産後うつになると言われています。

近年の研究では、周産期は男性も8.4%、約11人に1人の確率で産後うつになることが明らかになっているそうです。女性とほぼ変わらない確率ですね。

しかし、性別による違いもあるようです。

うつの代表的な症状、「不快気分」「気力の低下」などは、男女に共通して現れますが、男性の場合は、女性と比較して「怒り」「苛立ち」「過活動」「衝動コントロール困難」などの形で症状が現れやすい傾向があるとされています。

また、「発症時期」にも男女差があり、男性の産後うつは、出産の3~6カ月後が最も発症率の高い時期になるようです。

男性の場合によくみられるのは、自分の中にある「こうありたい父親像」とのギャップで苦しむパターンや、パートナー(妻)が先に産後うつになり、その影響を受けてしまうパターンなどがあります。

産後は生活スタイルが大きく変化するため、仕事や、友人、パートナーとの関係に関して、出産前に持っていた価値観を変える必要があることも多いです。

男性にもパタニティブルーや産後うつがあることを知らない場合、「気力の低下」「ミスの増加」などのうつ症状が出ていても、「あの人、仕事ができなくなったな」程度にしか思えず、うつ正直を見過ごしてしまいます。

自殺までに至らずとも、一人で抱え込んだ結果、アルコール依存症などを引き起こしてしまうケースもあるようです。

このような事態を避けるために、「男性も産後うつになる」ということを世の中が認識し、男性が弱さを表出できる社会を作っていく必要があるのではないでしょうか。

また、メンタルヘルスの問題は、パートナー間でお互いに影響を及ぼし合うことがわかっており、女性が産後うつになると、男性が産後うつになる確率は24~50%ほど上昇するそうです。その逆もあります。

夫婦関係や家庭円満、子どもの虐待防止のためにも、男性も産後うつになることを理解し、それがどのような症状として現れるのかを把握することではないでしょうか。

そうすれば、初期症状の段階で自身の異変に気づき、深刻化する前に対応ができるようになるはずです

◎主なうつの症状◎
ほとんど1日中気持ちが落ち込んでいる
以前楽しかったことが楽しめない
食欲がなくなっている(コントロールできない)
夜眠れない(寝すぎてしまう)
なんとなく落ち着かない
疲れやすい、気力が湧かない
自分には価値がないと感じる
頭が働かない、集中できない
死んでしまいたいという考えが浮かんでくる

男性の産後うつ」「女性の産後うつ」と分けて考えるだけでなく、夫婦の問題として理解し、考えていくことが大切ですね。

しかし、ご夫婦だけで解決しようとすると困難やこともあるため、家庭内で抱え込んでしまわないようにしましょう。

市区町村に相談窓口などの公的支援や、産後ケア施設、保健師さんなどに相談するなどもありますので恥ずかしがらず、ためらわず相談する・助けを求める第一歩を踏み出して見ましょう。

ここまでが産後のメンタルのお話になります。

正直なところ、産後のメンタルが崩れるのは誰がいつ崩れるかはわかりません。

ですので、産後のメンタルが崩れるとどうなるのか?どうしたらいいのか?また、パートナー(夫)との関係の崩れや、パートナー(夫)がメンタルを崩す場合だってあるのです。

そんなことを、事前に知っている人はなかなかいらっしゃいませんので、しっかり理解して、ご夫婦ともに、また周囲の協力が必要となります。

今回のお話の内容を頭の片隅に入れておき、もしもの時にお役に立てると幸いです。

皆様が素敵な産後の生活、ご家族との時間になりますよう心からお祈りしております。

MW Yama

MW Yama

現在助産師経験12年目。 BlogやInstagramを中心に妊娠・出産・子育てについての情報をお届けしたり、 ご希望の方に向けてオンラインにて個別にサポートをしております。 安心・穏やかで幸せな妊娠・出産・子育てとなりますよう みなさまのお気持ちを尊重し、愛と優しさを持ってサポートしております。

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